協会レポート&ニュース

HOME / 協会レポート&ニュース

ヨガクラスの安全な開催における対応ガイドライン(COVID-19) Ver.1

2020年05月26日 | 新着情報

本ガイドラインの目的

緊急事態宣言は一旦解除となりましたが、今後も油断することなく一人一人が予防を心がけながら第二波に備え生活することが求められます。一方で、宣言の解除を受け、ヨガクラスの再開を検討される方も増えてくることが十分に予想されます。

新型コロナウイルス感染症の拡大を防止するため、そしてヨガクラスを開催する主催者、指導者、そして参加者の生命と健康を守るために必要な予防対応指針、そして発生時の具体的な対応に関するガイドラインを作成いたしました。

主催者の責任のもとに判断すべき項目もありますが、対応の不備により事態の悪化が発覚した場合、ヨガ業界全体への活動が自粛要請される可能性は十分にあります。また、感染が起こった場合、参加者のプライバシーや 個人情報を含む生活への影響を最小限とするための配慮も必要となります。ヨガクラスを提供されるすべての皆様に、万全の体制での開催を心掛けていただきますようお願い申し上げます。

一方で、ストレス状況下、呼吸を整え、体を適度に動かし、自分自身と静かに向き合うヨガの役割が見直されてきています。安全や安心が希薄になるような世相の中ですが、ヨガのクラスと同様に安全は制度だけでは守れません。一人一人が自分を大切に守ること、そして自分のことと同じように、他人やコミュニティを大切にしたマナーやエチケットを心がけること、ヨガの指導者が伝えられる安全対策は、自他への慈悲であることを考えると、対面のクラスのみならずオンラインのクラスの可能性も大きく広がっていくと考えています。クラスの開催も一気にではなく、安全を確かめながら、徐々に徐々に行動範囲を広げていきましょう。

そして何より、これまで人類が経験したことのない脅威の最前線で、自分自身やご家族の生命が危険にさらされるような過酷な状況下で献身的な努力をされている医療従事者の方々、そして医療をはじめ、国民の健康と生活を支えてくださっている多くの関係者の皆様に、最大限の敬意と感謝を表します。

2020年5月26日 一般社団法人日本ヨガメディカル協会   

代表理事 岡部 朋子

ガイドライン ver. 1 は下記より表示・ダウンロードできます。

https://yoga-medical.box.com/v/covid-19-guideline1

リンクにうまく飛べない場合は、リンクのアドレスのコピー & お使いのブラウザへのペーストをお試しください。

また、手洗いの徹底に際しては、手洗い場所に具体的な方法の例示が必要です。下記、サラヤ株式会社様の「衛生的手洗い」のページをご紹介させていただきます。ページの下の方に印刷可能なイラストがあります。

https://pro.saraya.com/pro-tearai/education/index.html

正当にこわがる

2020年05月16日 | コラム


「正しくおそれる」表題とは少し異なるこの言葉の方が、みなさんは聞き慣れているかもしれません。
震災以後、また最近の感染症に関連して「科学的な知見を拠り所にしておそれるべきことをおそれ、そうでないことは必要以上におそれないようにしましょう」という意味合いで使われているこの言葉ですが、物理学者・随筆家の寺田寅彦さんの言葉の引用とされることが多いものの、実際にそこに書かれているのは、実は表題の「正当にこわがる」という言葉です。 

  今浅間からおりて来たらしい学生をつかまえて駅員が爆発当時の模様を聞き取っていた。(略)「なになんでもないですよ、大丈夫ですよ」と学生がさも請け合ったように言ったのに対して、駅員は急におごそかな表情をして、静かに首を左右にふりながら「いや、そうでないです、そうでないです。――いやどうもありがとう」と言いながら何か書き留めていた手帳をかくしに収めた。
 ものをこわがらな過ぎたり、こわがり過ぎたりするのはやさしいが、正当にこわがることはなかなかむつかしいことだと思われた。

寺田寅彦「小爆発二件」より

駅員が示した「おごそか」な表情とありますが、おごそかとは威儀正しい様子のことであり、恐れ(=恐がる)というよりも、畏れ(=畏敬の念)を表している感じがします。そして「正しく」ではなく「正当に」という言葉により、それが事実か否か・合っているか間違っているかというよりは、自然を畏れることは道理にかなっているということを表しているようにも感じられます。

このことについて作家の佐伯一麦さんは「浅間山の爆発についての随筆の中での寅彦は、『正当にこわがることはなかなかむつかしいことだと思われた』と記している。正しく、ではなく正当に、です。科学者たちの言うニュアンスとは正反対のように私には思えます」と述べていますが、みなさんはどう感じられますか?

寺田寅彦さんのいうように、私たちは意図せず「こわがらな過ぎたりこわがり過ぎたり」します。またそれはどちらか片方に固定されるものではなく、自身の状態やそのとき置かれた状況や立場により揺れ動くものです。そして揺れ動いているからこそ、その両方を大切にすることもできるのではないでしょうか。

「正しくおそれて」今それぞれができることに尽力しながらも「正当にこわがっている」今の自分に気づきそれをまるごと受け入れる。それは改めて自分を大切にするための大きな一歩になるでしょう。そしてそこにまたヨガがお手伝いできることがあるのかもしれません。
(松原 昌代)

不安に対処するための5カ条「APPLE」

2020年05月10日 | コラム

APPLEとは、不安障害に取り組むイギリスの支援団体であるAnxiety UKが提唱する不安への対処法です。下記の頭文字からなります。

Acknowledge(認める)、Pause(小休止)、Pull back(一歩下がる)、Let go(受け流す)、Explore(探索する)

  • Acknowledge(認める):不安を感じたら感じている自分に気づき、不安そのものを認める。
  • Pause(小休止): 反応する前に、気づきそのものを観察し、止まって深呼吸。
  • Pull back(一歩下がる):不安な感情を客観視する。また始まったと自分に言い聞かせる。答えは出ないことを思い出し、自分が考えていることイコール事実ではないこと、自分が考えていることに責任(ねばならない)を持つ必要もないことを思い出そう。
  • Let go(受け流す):不安や感情はそのうち過ぎ去るものだから、流れて行くのを待つ。雲や泡になって流れ去っていくところを想像するのもいい。
  • Explore(探索):今に目を向ける。ぜなら今まさにこの時、この瞬間、自分の呼吸、息をする自分の感覚を意識する。地に足がついている感覚を思い出し、たった今自分が見聞きしているもの、触っているもの、香りに意識を向けてみよう(マインドフルネス)

これらはすべてヨガへの取り組みを通じ、行なっていることですね。不安への対処も他のスキル同様、練習を続けることで、上達します。このような時期だからこそ、試してみる価値はありそうです。

(文責:岡部 朋子)

出典:”Coronavirus: How to protect your mental health”

https://www.bbc.com/news/health-51873799

ネガティブ・ケイパビリティ

2020年05月10日 | コラム

自宅でできるヨガは、運動不足解消だけではありません。

以前、協会のコラムで「ネガティブ・ケイパビリティ」について、次の様な記事をご紹介させていただきました。

新型コロナウイルスで先行きが不透明な状況を過ごしていく中で、自分自身と向き合うヨガという時間は「わからないことをありのまま受け入れる」という姿勢を培ってくれます。

帚木蓬生先生が、ネガティブケイパビリティについての書籍を書かれています。ぜひ在宅期間中を利用して読んでみるのはいかがでしょうか。

「ネガティブ・ケイパビリティ 答えの出ない事態に耐える力」(朝日選書)

こちらの記事も参考になります。

解決しにくい状況に焦らずつきあう 帚木蓬生さん「ネガティブ・ケイパビリティ 答えの出ない事態に耐える力」(良書好日)

https://book.asahi.com/article/11581829

「悩んで耐える能力こそ知性 帚木蓬生、ネガティブの勧め」(朝日新聞デジタル)

https://digital.asahi.com/articles/ASN4941N1N48UCLV00K.html

上記の記事で先生はこうおっしゃっています。

精神療法は『知識』を頭から消し去り、『欲望』にとらわれず、我田引水に患者を『理解』しようとしてもいけない――。生まれたばかりの赤子に対するように接することで、交わされる心情と言葉が力を持つと主張したんです」

自宅にてヨガの時間をもつことを通じ、自分や他人に対する根源的な慈悲を取り戻すことができるのであれば、私たちはコロナを乗り越えたのちに新しい世界を作っていけるはずだと思います。

(文責:岡部 朋子)

孤独が内包する豊かさ

2020年05月8日 | コラム

状況がさまざまに変化する日々が続いておりますが、みなさんいかがお過ごしでしょうか?

私はマスクをつけた子どもたちが星野源さんの「うちで踊ろう」を大声で歌う中、家でこの記事 を書いております。

さて、海外の都市が次々にロックダウンされ、日本でも緊急事態宣言が出されて人と人との分断 の影響が不安視される中で、何ができるのか。 そんなことが、先日の認定セラピストオンライントーク会での話題にあがりました。
※そちらの様子はこちらをご覧ください。
~開催報告~第2回認定セラピスト オンライントーク会

米オハイオ州立大学の研究によれば、孤独を感じている人ほど体内のウイルスの活動が活発にな る、つまり孤独感が免疫機能を低下させる可能性があるとのこと。 その他にも、孤独感が心身に影響を与えるという研究はいろいろあがっています。 そしてここで確認しておきたいのは、物理的環境的に実際孤立しているかどうかではなく、本人が 孤独だと「感じている」かどうかが心身に影響しているということです。

普段のヨガセラピーのクラスでは、これもヨガなの?と言われることがあるくらい、運動強度とし ては敷居を下げた内容が多いと思いますが、ここでさらに運動という垣根も低くしてみるのはど うでしょう。

「電話で繋がり、声や息づかいを受け取りあってみる」「文字や絵、写真や動画で繋がり、思い を届けてみる」 孤独感が強くなりそうな状況の方へ、ただそっと寄り添うだけのそんな姿勢は、ヨガセラピスト の方々がすでに持っている姿勢であり、ヨガの語源yujにつながる姿勢でもあると思います。

そしてたとえ物理的環境的に離れていても、つながっているという気配を感じてもらえるように働 きかけることは、自分自身の持つつながりを改めて味わう機会にもなるでしょう。

あなたのことを気にかけていますよ、大切に思っていますよという気持ちを、まずは身近な人やご 縁のある人へ届けていけるといいよね、それもヨガだよね、会議ではそんなことをみなさんと共 有することができました。
※こちらの記事もご参照ください。「心をあたためる・電話でシニアヨガ」



………………………

ちなみに哲学者ハンナ・アーレントは、人間が一人になる状態について 「孤独」「孤立」「孤絶」の3種類があると述べています。

孤独(solitude)=他者との関係を断つことで自分自身と共にある状態。自己と向き合うために 必要な状態

孤立(loneliness)=自己と向き合うことができず向き合える他者を求めるが、何らかの理由でそ の関係性も断たれている状態

孤絶(isolation)=何かしらの作業や物事に気をとられており、他者とも自分自身ともつながっ ていない状態 (※他にもいろいろな解釈があります)

確かに多くの人の中にいても孤立・孤絶していることもあれば、一人きりでいても孤独の中では 自身と共にあり、実は決して一人ぼっちではなかったりします。
そう考えると孤独とヨガの近しさに気づき、その中に豊かさまで感じられてきませんか?

例えば今懸命に働いてくださっている方々や、不安や心細さ・苛立ちで落ち着かない方々の孤絶 や孤立を「孤独」に昇華させていくために、ヨガセラピーのひとかけらがお手伝いできたらいい なと思うのです。

…………………


この記事を書きながら、星野源さんの「うちで踊ろう」の「うち」は、家ではなく内、自分の内 側のことなのかもしれないなあなんて、改めて歌詞を振り返りたくなりましたが、すでに子供た ちは同じく星野源さんの「恋」を歌って踊っており。

” 2人を超えていけ 1人を超えていけ ” と、きっとどちらの曲も「孤独」の中で丁寧に紡ぎ出されたのだろうなあと思いを馳せるのでし た。 (松原 昌代)