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グリーフケアをサポートするヨガへの想い

2019年01月21日 | その他

当協会会員、グリーフケアサポートヨガリーダーでありグリーフケアアドバイザー の杉島小百合先生よりご寄稿いただいた記事です。
同じような経験をされた方の為、何かお役に立てることがあればと、
小百合先生ご自身が経験された苦悩と、その経験からの気づき、寄り添う人はどうあるべきなのかを、実体験と共にあるがままを書き綴ってくださいました。
一人でも多くの方にこの記事を通じて、グリーフケアというものを知っていただき、大切な人を失った方が、社会的弱者にならず済むような、そんな配慮ができる優しい社会になっていくことを祈ります。

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私の夫は、埼玉医科大学国際医療センターの一室で2016年3月29日永眠しました。

その瞬間夫と作ってきた人生が崩れ去ってしまったような感覚でした。
これからもそのまま続いていくと思っていた二人の人生が無くなったのです。絶望的でした。

深い悲しみの中、何が起きているのか、愛する人がいなくなったのに何故自分は生きているのか、生きている事に何の意味があるのか、これからどうなってしまうのか…。
不安と苦しみにがんじがらめにされていました。

小さな音にも怯えるような極度の緊張状態になり、胸は痛み呼吸も苦しく
何を食べても味は無く、眠ることも出来ず、ただ ただ涙が溢れる。人の目も言葉も外に出るのも窓を開けることさえも怖くなってしまったり…。

こうしたことは、大切な人を失くした多くの方が経験されているのではないでしょうか。

先日、日本ヨガメディカル協会のメディカルサポーターにご就任されました、埼玉医科大学国際医療センター精神腫瘍科教授 大西秀樹先生の著書「遺族外来―大切な人を失っても」を拝読し
2018年12月8日茨城県いのちの電話記念講座を拝聴しました。

『愛する人を失う事は人生最大のストレスであり、人生にとって最も辛い出来事であるという最低限の事柄だけは知っておくべきである』
大西先生の著書に書かれていたこの一節はセラピストの皆様にも是非広めていきたい理解であると思います。
「人生最大のストレス、最も辛い出来事」は人を心身ともに容赦無く苦しめてくるのです。

また同著には遺族に「言ってはいけない」言葉があると記されています。
例えば、“落ち着いた?”や“元気そうね”“がんばってね”など、一見相手を気遣った悪意のない言葉にも、遺族は傷付いてしまうことがあります
私自身、“娘さんやお孫さん達がたくさんいるから(さみしくなくて)よかったね”そう言われるたび、とてもつらい気持ちになりました。
娘や孫が何人いようと、私の夫は彼一人、夫の代わりはいないのです。
そんな風に優しさでかけて頂いた言葉にすら傷ついていましたから、心無い一言を受けてパニックに陥ってしまう事もありました。

大西先生の遺族ケアにおいても、病院でケアしても家に戻った時に周囲の人が発した一言で傷つき今までおこなってきたケアが後退する状況を何度も経験されており、
だからこそ遺族ケアは社会の問題であると実感されているそうです。
「愛する人を亡くした人に対する対応はマナーとして知っておく必要があり、そのために教育は欠かせない」とおっしゃられています。
先生は言葉は有効ではない、しゃべらないのが原則で、言葉より抱きしめたり、一緒に泣いた方がよいとおっしゃっていました。

遺族は深い悲しみの中にいます。
何らかの理由でその悲しみにふたをしてしまうと何年経っていたとしても
そのふたが開いてしまった瞬間からグリーフ(悲嘆)状態に陥るのです。

「悲しみは除くものでも遠ざけるものでもない」
人は成長する力を持っている。死ぬまで成長する。
もう一度生きていけるように、遺族はもがき闘い成長していくのです。
そして私自身もまだその中にいます。

夫のいない絶望感を紛らわすように過活動にもなり、不安定な状態で仕事を入れすぎ心身の不調は自分ではどうにもできなくなっていました。
そんな時、仕事の一つとしてやらねばならなかったヨガのクラスで生徒さん達と共に呼吸をし、それを感じた時、癒されている事に気づきました。言葉ではなくそこに一緒にいて下さった皆さんに癒されている事に気づいたのです。

あんなにも苦しかった呼吸がふんわりと感じました。
参加者の皆さんに心地の良い空間で心地の良い時を過ごして欲しいと思う気持ちが
自分をも落ち着かせ、クラス1つ1つが私にとっても癒しとなっていました。
もちろん、夫を亡くす前も皆さんとのクラスに癒されていました。
ですが、このグリーフ状態の私にまでそれは届いていたのです。
ヨガが治すのではありません。でもその時だけは、がんじがらめになった心身が解放され、“こうでなければ こうしなければいけない”ではなく“ありのままでいい”その場所は私の救いとなりました。

私たちセラピストは、ヨガという手法を用いて
病院でケアされている方も、そうでない方も
安心して呼吸の出来る場所で、緊張して凝り固まった体を緩め
気分転換に体を動かし“何故?どうして?どうすれば…。”に支配されてしまった脳を休めて頂き、慈しみの心でそばにいる事で、遺族に寄り添っていく事が出来るのではないでしょうか。
そしてもう一度、生きていけるように 遺族の社会適応を援助していく事につながっていくのだと思います。

まだまだお伝えしたい事がたくさんあります。
これから共に学び、ご遺族に寄り添って下さる方々が増えて下さるよう心より願っております。

最後までお読みいただきありがとうございました。

グリーフケアサポートヨガリーダー
グリーフケアアドバイザー
                       
杉島 小百合

医療におけるサポートと自立支援

2019年01月18日 | その他

医療現場において、患者さんへのケアやサポートは、どこまでするべきなのでしょう。特にがん患者さんへのサポートは、近年どんどん手厚くなってきているようです。では、そのサポートとは果たして本当の意味で患者さんへのサポートになっているのでしょうか。患者さんを一方的に支えるだけでは本当のサポートにはならないのではと、懸念を示す医師もいます。

例えば、人の手を借りて楽になる。癒しを得る。これは、一見サポートのようではありますが、人に頼まないとできないことです。
これを、仮に自分で自分を楽にできる手段を伝える。癒しを得られる方法を覚えてもらう。に切り替えた場合はどうでしょう。

その患者さんは、ひとりの時でも楽になれたり、癒しを得ることができるのです。誰に頼るわけでもなく、自らそれらができるようになるのです。自分自身でそのような状態を作りだせたとき、人は自信と希望を再び胸に抱くことができるのではないでしょうか。病気になってしまった自分を、もう一度好きになることができるのではないでしょうか。
自分でできることは自分でする。それが人としての尊厳を保つために必要不可欠なことであり、患者さんへの自立支援こそが真のサポートに繋がるのではと思います。


とはいえ、現実では闘病、治療の過程で身体の自由は少なからず奪われます。出来ることも限られてしまいます。そんな時、人は自暴自棄になり自分の足で立とうとすることを諦めてしまうこともあるでしょう。人に頼ることしか考えが及ばなくなる時もあるかと思います。

そんな時こそ、医療スタッフの方々の寄り添いと励ましで患者さんの自立支援をサポートする時なのだと思うのです。

何にでもヨガを結びつけるようですがヨガは、呼吸さえしていればできます。マット一枚のスペースでも、椅子に座ってでも、病棟のベッドの上でもできます。ただ、手のひらを開いたり閉じたりすることを、ゆっくり丁寧に呼吸に合わせて行うだけでも頭の中がスッキリします。余計な緊張が取れます。

慣れ親しんだ病院スタッフの方々から、その方法を教わることができたとしたら、患者さんにとって、どんなに安心でしょう。

ヨガセラピーの効果は、実際に体験していただいた方にしか伝わらないかもしれません。しかし実際に私たちの目の前では幾人もの方々が、いたって単純簡単なことで全身の変化を感じてくださいました。楽になっていただけました。難しいポーズを取ることがヨガなのではありません。本来のヨガとは、呼吸と、ゆっくり丁寧な動きに意識を集中するだけなのです。そしてそれは覚えてしまえば、いつでもどこでも自分一人でできるのです。患者さんのQOLの向上に繋がるのです。

ヨガの効果に科学的根拠を求められますと、残念ながら、まだまだ解明しきれていないことだらけであることは事実です。
エビデンスの少ないヨガではありますが、少しづつ医療者へのヨガ提供の場を設け、実際に体験していただくことで、効果を実感していただき、信用と理解を得て、患者さんへの自立支援、サポートとして寄り添うヨガを医療現場に普及させていくことが、当協会の社会的役割だと思っております。

〈 石井及子〉

心身の不調を抱えた方向けのヨガプログラム「マインドフルネスヨガセラピープログラム(MYTプログラム)」の医療者向け研修を下記の通りで行っております。

① MYTプログラム 体験研修 2時間

② MYTプログラム 実践研修 6時間

③ MYTプログラム体験+実践研修 7時間

詳細に関するご質問やお申し込みは、お問い合わせより「MYTプログラム研修の件」というタイトルでご連絡ください。上記の研修時間以外でも、ご相談に応じますのでお気軽にご連絡ください。

笑顔ヨガ開催報告と出張開催のご案内

2019年01月9日 | 協会外主催 講習等

2018年12月、Chang 三夏先生をお迎えし「笑顔ヨガ」のワークショップを開催しました。

ヨガありきではなく、笑顔ありきというテーマで和やかに始まりました。
とても入りやすかったのは、意外と緊張している顔の筋肉を緩めてから、笑うワークに入ったことです。
大人になるにつれて色々な感情記憶(サンスカーラ)と理性で私たちは自ら笑いを制限してしまっていることは勿体無いことだと気付かされました。
たくさん笑った後に、静かな時間をとると、自分の内面に向かいやすくなります。

協会のヨガの定義である「ヨガとは、自分自身の呼吸や体の動きに意識を向けることを通じ、心を落ち着かせる練習である。」〜中略〜 適度な運動に穏やかな呼吸を合わせることで、自己観察を促し、リラクセーション効果を得ることができる健康法として現代に伝承されている。」にしっかり沿ったかたちで講座を進めてくださった三夏先生の笑顔ヨガの講座は、今後も開催の予定です。

職場で「笑顔」が必要とされる、医療、介護職の皆様、ぜひ次回開催のご案内をお待ちください。

【笑顔ヨガ:医療・介護施設への出張講座】

従業員の皆様の福利厚生にいかがでしょうか。
講師:Chang 三夏 先生
2.5時間の講座 50,000円 + 交通費実費

開催をご希望の方は協会問い合わせフォームより「笑顔ヨガ講師派遣希望」のタイトルにてお問い合わせください。

なお、講師のスケジュール上ご希望に添えない場合もございますのであらかじめご了承ください。

倫理講座 開催報告

2018年12月16日、認定ヨガセラピストを目指す人材向けの倫理講座を開催いたしました。入門講座を修了されている方も多く、それぞれの持ち場でセラピーとしてのヨガの実施に取り組まれており、活発な意見交換が行われました。

ヨガセラピストとして必要な心構えのみならず活動していく上での課題が見えたとの感想を数多くいただきました。

その課題を乗り越えていくために、必要なのは仲間であり、仲間とのコミュニケーションとなります。今回の参加者の皆様には、前回の参加者の方同様、ペアワークの宿題があります。同じ志を持たれているだけに、大変和気藹々とグループワークも進みました。

職業倫理は講座のみで習得できるものではなく、活動で直面した壁や顧み、そしてヨガを通じて関わる現場の方々や生徒さんが多くを教えてくれます。

本年の講座は終了となりますが、来年も定期的に開催してまいります。ヨガセラピーを志す皆様との学びを楽しみにいたしております。

講師:岡部 朋子

グリーフケアとヨガの可能性:社会資源としてのあたたかな受け皿

2018年12月11日 | 協会外主催 講習等

埼玉医科大学国際医療センター 精神腫瘍科大西秀樹先生にメディカルサポーターにご就任いただきました。2018年12月8日に茨城県いのちの電話記念講演を拝聴し、協会のこれからの取り組みに必要とされることをまとめました。(文責:岡部 朋子)

大切な人を失った方には、不安、抑うつなど精神症状のほか、引きこもりなどの心理・社会的問題、心血管疾患罹患率の上昇、後追い自殺、などのリスクが高まります。しかし、適切な介入が不安や緊張を緩和させることがわかっています。

遺族外来・遺族支援の目的は「社会適応の援助」別な言い方をすれば、その方が愛する人との別れを経て、新たに歩んでいく世界を再構築していくのを支援していくことにあるそうです。悲しみを抱えながらも、その方が「もう一度生きていけるように支援すること」そのために遺族外来では個人精神療法、心理療法、集団精神療法、社会的問題への対応を行なっているそうです。

【人間は成長できる:PTSDからPTGまでを見守り寄り添う】

大西先生がおっしゃるには、人間は悲しみの中にあっても成長を遂げる生き物だということです。PTSD(心的外傷後ストレス障害)という症状がありますが、PTG(ポストトラウマティックグロウス-心的外傷後成長)という概念があることはあまり知られていません。PTSD を PTGにつなげていく上で最も大切なことは、見守る側の人間が「待つ力」なのだそうです。今を無理やり変えようとするのではなく、今の気持ちについての話を聞き、今後の支援を約束することで、希望を持ってもらうことだということでした。

【有用援助が必要とされている】

実際には喜ばれるであろうと思われる援助が実は有害援助だった、ということが少なくないとのことです。決してしてはいけないこととして「回復のアドバイス」があるそうです。回復のアドバイスをするより、一緒に泣いて抱きしめてあげたほうがよっぽど良いそうです。結局ご本人の気持ちはわかるはずはなく「わからないけど、わかりたい」というスタンスが大切なのだそうです。

また「立ち直る」「前向きに」という言葉もタブーとのことです。なぜなら、故人がいた世界に立ち戻ることは不可能であり、遺族の方は自分の世界を再構築していく必要があること。そして前向きで、と言ってもどちらが前かわからないからだそうです。

これをやると確実に鬱や悲しみを解決できる、というものは存在しないそうです。やってはいけないこと、は存在します。その上であえて有用援助とはどのようなものか、それは「そばにいる、感情を出せる、同じ人間としての目の高さ」このような受け皿があると、患者さんは自ら社会資源としての支援を選択・活用され、立ち直って行かれるそうです。

【ありのままというヨガの姿勢で待つ】

これまでのことは、グリーフケアをサポートするヨガを担当する方にとってとても大切な心得だと思います。つい「ヨガで悲しみが癒えますよ」「心身症が楽になりますよ」などと言ってしまいたくなりますが、そうではありません。

法華経に「常懐悲感心遂醒悟」という言葉があるそうです。これは、悲しみは遠ざけるものではなく、抱き続けるもので、そうするとやがて悟りがやってくる、という意味とのことです。また、大西先生が引用された柳田邦男さんの言葉「グリーフワークとは消すことのできない悲しみや辛さを抱えながらも、生きようとする意思がしっかり自分をコントロールできるようにする作業なのだと思う」

この生きようとする力が本人に湧いてくるまでヨガの「軽い運動による気分転換」「呼吸ワークによる情緒の安定」「リラクセーション」というテクニックを安全に提供できる社会資源としてのヨガクラスこそが、協会が提供していくべき受け皿なのではないかと考えます。

杉島小百合リーダーのもと、今後も各種勉強会を開催してまいります。