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病院での乳がんヨガを取り入れることについて 

2019年02月12日 | 協会報告


「2018年ヨガセラピーの普及への多大なる貢献」として感謝状を贈らせていただきました、川口貴枝 先生より、ご寄稿いただきましたのでご紹介いたします。

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昨年2月、埼玉県内の病院から乳がんヨガ指導者養成講座開催のご依頼がありました。

 
これまでにも医療従事者の方には個人としてご受講いただいたことはありましたが、今回は「病院のチーム」として乳腺腫瘍科に勤めていらっしゃる医師、看護師、社会福祉士、と参加者が全員医療従事者です。 

乳がんヨガを乳腺腫瘍科チームに提案をして下さった看護師さんは、以前ご自身がヨガをされていた時に身体がリフレッシュされた感覚や自分を見つめ直す事ができた体験から、ヨガが患者さんに何か役に立てるのではないか?と思いついたそうです。 


医療の知識はあっても、ヨガの知識はほとんどない。 初の病院開催での乳がん指導者養成講座は参加者の大半がヨガは初めてという方ばかりでした。 そういった方々にヨガをどのようににお伝えし、そして医療の現場に取り入れてもらえるか? とても考えました。 

ヨガがもつ深いメッセージをお伝えするには、6時間の講座では決して足りませんが、まずはヨガ=ポーズではないことと、誰でもできること、それは何故か、そしてセラピーとしても患者様へ寄り添うことができるものだという事をお伝えしたいと思っていました。

 
それでもヨガの敷居は高く感じられているのが事実です。こればかりはヨガを体験してみないと分からないことも多くあります。特に医療現場ではエビデンスがとても重視されています。患者様へどのような効果があるのか、またどのように安全に行えるのかなど、医療の現場へヨガを持ち込むことは、ヨガをほとんどされたことがない方にとって 、ハードルが高く感じるかもしれません。 実際、養成講座に参加された医療従事者の方からは「ヨガを教える自信がありません」というお声が多かったのです。

 
そういった事もあり、養成講座開催終了後から暫くして、まずは私が病院で乳がん患者様向けのヨガクラスを担当することになりました。

医療従事者の皆様には毎回一緒にクラスにご参加頂き、ヨガのレッスンを通してご自身の体感なども実感して頂きました。

それに加え、クラスつくりのポイントや注意点などのフィードバックもしていき、皆さんと一緒にクラスの作り方を数か月間お勉強をしてきました。

レッスンでは毎回患者様からアンケートも頂き、ヨガが患者様にどのような効果があるのか、またヨガをした後のご感想などを頂き、心と体の変化のチェックもしてきました。

ご感想はいつも嬉しいお言葉ばかりでした。 

「スッキリした」「毎月この時間がとても楽しみです」「気持ちがらくになりました」など。 また、ご近所や職場などで自分の病状について語れない方にとっては、乳がんヨガクラスは日常から少し離れることができ、自分を見つめる時間になる方もいらっしゃいます。 

クラスは回を増すごとに人が増えていきます。 病院ではエビデンスが重要ですが、ある看護師さんが「この感想と参加人数が全てを語ってますね。」と仰っていました。  


そして、ついに看護師さんがレッスンを開催する日がやってきました! 日々のハードワークの後に練習を重ね、この日の為にとても一生懸命にヨガのお勉強をして頂きました。 

「自信がない」というお声もありましたが、開催してみれば【看護師さんが教えてくれるヨガ】というだけでも患者様のお顔がぱーっと明るくなるのが分かります。 参加者の皆さん、とても嬉しそうなお顔です。

いつも優しく寄り添ってくださる看護師さんがヨガも指導をしてくれる。 こんな安心感は正直なところ、いくらプロのヨガインストラクターでも得られるものではありません。レッスンを拝見していて病院でのヨガは心と体の安全を確保してくれる安全地帯のような感じがありました。

 術後の傷の痛みや、お薬の副作用など、誰よりも理解をしてくださる方がそばにいてくれる安堵感。そういった中で自分の力で体を動かし、呼吸をいつもより丁寧にしてみる。

それだけでもクラスの後は皆さんいきいきとしています。そういった所を拝見し「病院は病気を治してくれる場所」というイメージから「病院は自分で立ちあがる力も教えてくれる場所」になりつつあるのだな、と感じました。

 
これからも病院でのヨガが発展していきますように、心より願っております。

文責
BCY Institute Japan
川口 貴枝