自閉症とヨガ:研究
アメリカでここ数年急速に導入が進んでいるのが、教育現場へのヨガの導入です。
子供たちの心と体のケアに具体的な方策が必要になっている社会状況の反映でしょうか。
中でも、自閉症やアスペルガー症候群の子供たちの認知行動療法への応用としてヨガセラピーが取り入れられるケースが増えてきています。
Phase III などの臨床試験が行われており、かつその結果が良好な がん x ヨガなどに比べ、自閉症に関する大規模臨床試験はまだ始まっていません。
しかし、実際に教育現場での導入が普及し、教育者や両親、子供たちにとってその効果が予測・実感できるようになってくれば、数値的な証明への要請も高まり、今後エビデンスも構築されていくことでしょう。
ここでは、二つの臨床事例をご紹介させていただきます。
自閉症の子供達の睡眠障害、胃腸不良、問題行動と、ヨガというセラピー、記述的レビュー
Narasingharao K1, Pradhan B2, Navaneetham J3.
J Clin Diagn Res. 2016 Nov;10(11):VE01-VE03. doi: 10.7860/JCDR/2016/24175.8922. Epub 2016 Nov 1.
ASDの子供達は神経の病状そのものだけではなく、不眠や不良が問題行動を引き起こしているということが研究で分かっている。特に問題となるのは、子供達の世話をしている母親との関係に高いストレスをもたらすことだ。心理的レベルでの行動介入がヨガでこのような問題を解決するために行われている。ヨガは安全に行えば害がなく、心と体に変化をもたらす代替療法である。自閉症の子供達のケアにあたる両親たちも高血圧や、糖尿病、関節炎などの影響を受けやすくなると言われている。親によるヨガの介入は子供達と両親、そして家族全体に良い影響を与えるだろう。
パイロットスタディ:リラクセーションを目的としたヨガが自閉症児童の機能改善をもたらした
Rosenblatt LE1, Gorantla S, Torres JA, Yarmush RS, Rao S, Park ER, Denninger JW, Benson H, Fricchione GL, Bernstein B, Levine JB.
J Altern Complement Med. 2011 Nov;17(11):1029-35. doi: 10.1089/acm.2010.0834. Epub 2011 Oct 12.
目的:緩やかな動きのヨガによる保管代替療法的アプローチが、自閉症児童に及ぼすセラピー効果の検証
対象:ASDの診断を受けた、3-16歳の子供達24名
介入:8週間に渡る、リラクセーション反応を目的としたヨガ、ダンス、音楽療法
計測手法:BASC-2(The Behavioral Assessment System for Children, Second Edition) 並びに ABC(Aberrant Behsavioral Checklist)
結果:5-12歳の子供達に、BASC-2にはっきりとした変化が見られた。予想に反し、BASC-2での自閉症児に特有な項目において、治療後の数値は優位であった。(p=0.003)
結論:リラクセーション反応を意図した、動きを伴ったヨガとダンスは自閉症児童、特に就学前の子供たちの、行動改善に効果があった。
自閉症とヨガに関する記事はこちら
《お知らせ》
協会では「自閉症とヨガ」の分科会の座長を募集しております。
この分野に関心のある方は、一般会員としてご入会の上「座長希望」の旨問い合わせフォームよりご連絡をお願いいたします。
分科会についてはこちらをご覧ください。