「10代の脳 ~反抗期と思春期の子供にどう対処するか~」 フランシス・ジェンセン博士 著
理解不能な若者の言動に、大人は常に悩まされます。
「最近の若者はけしからん。」
良く聞くこのセリフも、俗説によれば約5000年前のエジプトの遺跡にも書かれていたとか。
となると、「最近の若者は…。」ではなく「そもそも若者ってやつは…。」ということになるのでしょうか。
大きなランドセルを背負って小学校に入学したのはつい昨日のことのようなのに、無邪気であどけなかった可愛い我が子はいつしか気難しい表情を覚え、反抗期、思春期へと足を踏み入れていくのです。
それは大切な成長の過程でもあるのですが、非情に危険で不安定な時期でもあります。
私たち大人は、自分も通ってきているはずのその頃のことなどすっかり忘れ、棚に上げては、まるで我が子を異星人でも眺めるかのように「最近の若者は…」とため息をつく。
何故、こんなにも私たち大人には若者の言動が理解しにくいのか。それは「脳」の違いなのかもしれません。
要するに、親世代の完成された脳と、10代や20代前半の不完全な脳では、構造が違うということ。
10代になれば誰もが、身体は大人と変わらないほどに成長し、会話していてもいっぱしの大人のような口を利く。
日常生活のほとんどのことを一人でこなせるようになるのだけど、目に見えない脳はまだ未完成だったのです。
なぜ若者は宵っ張りの朝寝坊なのか、なぜ危機回避能力が甘いのか、なぜいけないとわかっていることでも衝動的にやってしまうのか、そしてそんな時に経験してしまうドラッグやアルコールの弊害は大人と同等なのか、はたまたそれ以上なのか。
それらのことを、脳科学の専門家であり二人の子を持つ母でもあるフランシス・ジェンセン先生は、思春期に関する論文を研究者だけでなく、実際に10代の子を持つ母親に届けるべく一般読者向けのこの本を書かれました。
最先端の脳科学を用いて、一般の親や保護者、教育者にも理解できるよう様々な症例と共に、具体的にどう対処したら良いかなども書かれています。
頭ごなしに叱りつけることが無駄であること、手は離しても目は絶対に離してはいけないということ、そして私たちが思っている以上に薬物やドラック、タバコが10代の脳を破壊してしまうこと、よって近づけさせない努力が必要なことなどなど・・・。
これまではただただ焦り、イライラしていた子育てが、10代の脳の仕組みを理解することで少しの余裕が持てるかもしれません。
大人に余裕が出れば、それはお子さんにも伝わります。ヨガとはお互いさまであることを思い出す。そして親側の正義を一方的に押し付けるのではなく、相手の状況を学んでみることから始めてみませんか。
子に歩み寄る気持ちや余裕は、お互いに影響しあい、良い相互作用となるのではないでしょうか。
子育て中のお母様、お子さんと関わるお仕事をされている方は必読の1冊です。
< 文責:石井及子 >
画像をクリックするとAmazonよりご購入できます。