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【報告】パーキンソン病とヨガ勉強会

2019年02月6日 | 協会報告

2月2日、東京慈恵会医科大学 内科学講座 神経内科 助教
葛飾医療センター 神経内科 余郷 麻希子先生 と、Studio Full Moon の望月聡子先生をお招きし、パーキンソン病とヨガの勉強会を行いました。

パーキンソン病について、余郷先生から説明をいただきました。

運動の微調整を行う脳の部位の機能が低下する原因不明の難病ですが、薬が効きやすいのと、早期発見できればリハビリの有効性が高いと言われています。

バランスの改善や、筋力・可動域のアップはQOLの向上につながると言われ、これまでも太極拳や、アルゼンチンタンゴの有効性が研究されてきています。

介護保険を使って、デイサービスに行くという選択肢もある中、それに抵抗がある若年性パーキンソン病の方もいるとのこと、やはり多いのは、病院の中でリハビリがてら何かできたらいい、という声だとのことでした。

8年間、パーキンソン病の患者さん向けのクラスを続けてこられた望月聡子さんから、実際のクラスの様子や患者さんに対して気をつけていることを教えていただきました。

患者さんに接するときに一番大切にされていることは「聴く」ということだという望月先生、その方の今日の状態をお尋ねしながらも、プログラムの内容は変えないとのことです。変えないことで、患者さんが今日の調子を自ら気づくことを狙いとしています。

先生曰く、飴と鞭を使い分けています、とのことでしたが、先生のところに行くと元気になる、と今でも患者さん向けのクラスはなくてはならないものになっているようでした。

パーキンソン病の患者さんの運動リスクは、起立性低血圧、急な方向転換ができないこと、バランスを取るのが難しいこと、転倒などがあります。

起立性低血圧に関しては、寝た状態から立ち上がるときに、手足の筋肉を動かし、血流を起こしてから起き上がることでかなり症状を緩和できるとのことでした。特に足の筋肉は大きいので、動かすことで静脈の血流が上昇します。

では、実際の患者さんが具体的にどのようなことができ、どのようなことに難しさを感じるのかを、運動強度が著しく低いマインドフルネスヨガセラピーのプログラムで体験してみました。

やはりポーズの中には、転倒の危険などがあるものもありましたが、それをどのようにアレンジしたら良いだろうか、という議論が大変参考になりました。例えば、マットの上を歩く瞑想では、歩幅が小さいままであることと、方向転換の難しさから、できるだけ広い場所で方向転換をしなくて良いようにし、、歩幅の目印になるような床へのテープなどを貼って行う方が良いだろう、という意見が出ました。

また、手足の感覚がなくなる患者さんを、望月先生はあえて触って差し上げるとのことでした。ヨガセラピーでは、必要ない限りハンド・アジャストは行わない、触るときは配慮をした上で、という安全対策がある一方で、アルゼンチンタンゴが良いと言われるのも、触れ合いがあるからだ、ということを知り、つくづくヨガセラピーはケースバイケースだということを実感しました。

海外では、パーキンソン病や多発性硬化症の患者さん向けのヨガの指導書が販売されています。異なるコンディションに応じたポーズのバリエーションがイラスト入りでわかりやすく解説されています。

今回の勉強会を通じ、特定のプログラムが全てのパーキンソン病の方に当てはまる、というものがあるのではなく、余郷先生が冒頭のプレゼンテーションでおっしゃっていた、患者さんに寄り添える専門的な指導者を育成する、ということに尽きると感じました。

協会では、パーキンソン病の方のリスクに配慮したプログラムを作成し、それを患者さんに対し最適化して指導していける人材の育成に取り組んでいきたいと考えています。そのためにも、パーキンソン病という病気を理解することはとても重要であり、大変勉強になりました。

(文責:岡部 朋子)