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呼吸を自覚することの難しさ《愛誠病院 精神科女子閉鎖病棟でのヨガ》

2017年03月7日 | 事例レポート

ヨガってなに?
参加者約50名のほとんどが統合失調症である女子閉鎖病棟でのヨガは、動きを真似することからの始まりでした。

「吸って〜吐いて〜」「呼吸を感じて」
スタジオのヨガクラスでは当たり前のように行われている呼吸への意識。
愛誠病院の病棟クラスでは、それは当たり前の事ではありませんでした。
意識が外へ向きがちで、息の浅い患者さんには、自分の呼吸を感じる事が難しいのです。

15分というクラスでありながらも、当初は集中力が続かない患者さんに、いかに興味を持ってもらうかが課題。
試行錯誤を繰り返し、イメージしやすいようにポーズの名前や動きを工夫したりしました。
意識を何かに定められるように音楽、香りなども用いながら、ヨガセラピストの動きを真似するだけでも良し、見ているだけでも良しのクラスです。

次にどうやって呼吸を自覚してもらうか。
常に口が開いている状態の方が多く、鼻呼吸は難易度が高いため、声を出しながら息を吐く練習や、胸部に手を当て呼吸による身体の動きを感じでもらうなど、幾つもの方法を試みました。

少しづつ動きと呼吸を紐付けながら、焦らずゆっくりと、月日をかけて何度も何度も繰り返すことで、ひとつずつ出来ることが増えていきました。

週一回のヨガが病棟に導入されて一年が経つ頃から、目を閉じれる人が現れ、呼吸や感覚を自覚している様子が徐々にみえてきました。
ヨガセラピストが毎回毎回「呼吸」という言葉を繰り返していたため、患者さんからは「ヨガは呼吸だよね。」という言葉が出てきました。
喧騒から静寂が生まれる瞬間もあります。
自分の呼吸への感覚が不明瞭な方、意識が外に向きがちな方も、周囲の穏やかな雰囲気に影響を受け、静けさの中に身を置けるようになりました。

患者さんの状態は個人差が大きく、日々変動するため、ヨガクラスも安定している日、不安定な日とあります。
しかしながら、導入されてから三年近くが経った今、患者さん達の中でヨガは当たり前のものになってきています。
ヨガクラス以外の日も、心の安定のために自らヨガを日常に活かす方も出てきました。

動きに合わせ息の音が聞こえてきたり、合掌をしてご自身の内側を感じていたり、静けさの中で呼吸が身体を通して伝わってくる姿など、細やかなことですがこの病棟クラスでは大きな変化です。

そこには息の流れがあり、皆が心穏やかである瞬間が確かにあると思います。

(文責:愛誠病院ヨガチーム 高野裕子)

SYTAR 2017 – シンポジウム・ヨガセラピー・アンドリサーチ

2017年03月6日 | お知らせ

アメリカ・カリフォルニア州・ニューポートビーチで行われる
IAYT(国際ヨガセラピスト協会)主催のSYTAR 2017 – シンポジウム・ヨガセラピー・アンドリサーチ
への参加ツアーの募集が開始となりました。

2007年より毎年行われているこのカンファレンスでは、医師たちがヨガセラピーの可能性について語り、医療現場への導入事例や、臨床研究の数々、そしてセラピーとしてのヨガの実践方法などを幅広く学ぶことができます。

3000年続く叡智を現代医療の補完的サポート(Adjuvant アジュバント)として活用していく上で必要となる環境整備や、ガイドラインづくりへの取り組みも大変参考になります。
一般社団法人日本ヨガメディカル協会はIAYTと協力関係にあります。毎年カンファレンスに参加している 協会の代表理事 岡部朋子がカンファレンス参加者をガイドいたします。
「心配していた英語の壁は、ヨガの体験という実感で乗り越えられ、参加してよかった」という声を昨年の参加者からいただきました。
医療へのヨガの導入に興味をお持ちの方、ヨガセラピストという職業について知りたい方、ぜひご参加をお待ちいたしております。

【SYTAR 本場のヨガセラピーを学ぶ】

日程:2017年6月15日(木)~6月20日(火) 4泊6日
旅費:245,000円(2名一室/燃油サーチャージ別途・一人部屋追加代金5万円)

(注)金額は4/17現在手配できる金額です。今後変動する可能性がございますので、ご興味のある方はHISに直接お問合せ下さい。また、マリオットホテルは満室になりましたので、近隣のホテルが変更になります。

◆レジストレーション代行費用と含まれるもの
・一般早期割引  ※1 ¥77,400-
・一般レギュラー代金 ¥89,400-

※1 早期割引について:4月28日(金)までのお申 込みで早期割引を適応致します。また、2月現在割引料金の設定がありますが、IAYT側の都合により急 遽適応できなくなる場合がございます。
※費用の中には、カンファレンス、レセプション、夕食 会の費用が含まれております。
※セミナーの詳細はにお問い合わせ下さい。
◆レジストレーションのお取消料について レジストレーションは登録完了後、100%の取消料 がかかりますのでご注意ください。

詳細は添付パンフレット【0417改】 【募集書面】SYTAR2017をご覧ください。

【お申し込み先】
株式会社エイチ・アイ・エス
法人団体専門店事業部 視察旅行セクション
〒163-6011 東京都新宿区西新宿6丁目8番1号新宿オークタワー11階 担当:大西 愛理 さま
◆TEL : 03-5908-3225 ◆FAX : 03-5908-3028

愛誠病院 入院患者ご家族のヨガ体験

2017年03月1日 | 事例レポート

病院でのヨガというと、対象は患者さんに目が向きがちです。
しかし、患者さんと同様、またはそれ以上にご家族の方々も不安やストレスを抱えています。
愛誠病院は、年に4回、入院患者のご家族と病院側の話合いの場(家族会)を設けています。
昨年12月の家族会のテーマは、「困ったストレスとの上手なお付き合い方法」。
ストレス対処法の1つとして、ヨガが紹介されました。この日の参加者は、ご家族側2名、病院側3名(医師、臨床心理士、精神保健福祉士)、そして私たちヨガセラピスト2名でした。
まずは、病院側からストレスマネジメントについての説明があり、その後、自分のストレス状態をチェック。そして、ご家族からの質疑応答や日々のご苦労のシェアリングが続きました。
ご家族の参加者の一人は、ヨガ未体験で、もう一人の方は、以前ヨガをやっていたが、先生の都合でクラスが開催されなくなり、今は、時間、気持ちの余裕もなく、他の先生を探してヨガをする気になれないとのことでした。

ヨガの体験会では、椅子で輪を作り、医療者も含め、参加者全員で向かい合わせに座りました。
まずは、姿勢を整え、呼吸に意識を向けて、自分がどんな呼吸をしているのか観察してもらいました。
臨床心理士によるストレスマネジメントの説明で「ストレスに気づくために自分の休憩サインを感じ取ることが大切」とありましたので、簡単なポーズや動きで呼吸を深めながら、身体の感覚や気分に意識を向け、自分の状態に気づく時間としました。
また、ご家族からのお話の中に「病状と加齢に伴い、段々と会話ができなくなってしまっているのが寂しい」という、長期入院に伴う変化に心を痛められている様子が伺えました。
そこで二人組で背中を合わせ、相手の呼吸を感じ、言葉ではなく呼吸で、他者と繋がる感覚を味わってもらいました。
初めは雑念ばかり浮かんでいたようでしたが、「次第に呼吸に集中してくると、相手の体温が温かく感じてきた」とおっしゃっていました。

最後は、再び輪になって座り、隣の人と手をつなぎ、エネルギーを共有し、合掌で体験会を終えました。
ヨガの後は、医療者も含め、皆さんの顔の表情が明るく、緩んでいました。
「今日、ヨガができて本当に良かった。気持ちがホッとしました」などと、感想も好意的で、何よりも笑顔が見られたのが印象的でした。
このように、ほんの10分程度のヨガで効果が見られました。気持ちの余裕のなさから、自分のことが疎かになりがちです。
こうした病院の家族会のプログラムの一環として、ヨガを取り入れてもらい、「深呼吸をすることで、少し楽になれるんだ」ということをご家族の方々にも知ってもらうのは、意義のあることではないでしょうか?
自分から気づいてケアをする。
このきっかけを提供するという意味で、家族会でのヨガ体験は効果的だと考えられます。

(文責:愛誠病院ヨガチーム 高野裕子、平山綾子)

メディカルサポーター辰元宗人先生からのメッセージ

2017年03月1日 | お知らせ

《辰元宗人先生プロフィール》

獨協医科大学 神経内科 医療安全推進センター
医学博士、総合内科専門医、神経内科専門医、頭痛専門医

片頭痛の過敏症(光・音・臭い)を専門とし、ライフスタイルに密着した視点から「片頭痛にやさしい環境」を実現させる研究に取り組む。

先生からのメッセージ

片頭痛と過敏症(光・音・香り)の研究から得られた見地をもとに、体に優しい環境づくりや暮らし方を提案しています。ヨガに秘められた可能性は非常に大きく有用と考えられ、片頭痛の人にとって積極的に出来るセルフケアのひとつとなるのでは、と期待しています。
また、医学・看護学生の教育にマインドマップという思考ツールを使っています。マインドマップを用いて、解剖→機能→障害(症状)→疾患へ関連づける学習方法は、ヨガセラピストにも有用でないかと考えています。

Active Care(医療とインテリア)については、こちらをご覧ください。
http://www.active-care.jp
パンフレットはこちら
アクティブケア・ライティング ・パンフレット

先生のご著書はこちら

「マインドマップでつながる!わかる!: 解剖・機能・症状・疾患」
学研メディカル秀潤社

ヨガセラピストの本棚:心臓が危ない(長山雅俊先生)

「心臓病」と聞くと、皆さんはどんなイメージを思い浮かべますか?恐らく、重篤で深刻なイメージではないでしょうか。

日本人の死因の1位は癌ですが、次いで心臓病が2位となっています。心臓病が癌と圧倒的に異なる点は、ひとたび発作を起こせば一刻を争う重大な病ということです。
もし、私たちの大切な家族や友人が心臓病で倒れたら・・・。もし、自分の心臓がおかしいと感じたら・・・。
医学の専門的な知識は簡単に得られるものではなく、医療従事者でもない限り普通の人がその時に適切な判断や行動と取ることは、容易ではありません。

誰かの為、自分の為に、心臓病について知ることが必要になった時には、是非ともこちらの本をお勧めします。
榊原記念病院の長山雅俊先生が書かれました「心臓が危ない」です。
心臓の役割や構造などの基礎知識から、高血圧、狭心症、心筋梗塞、不整脈などの疾病に関しても、誰でも理解できるようにわかりやすく説明してくださっています。

そして本書の最後のほうに進みますと、「心臓リハビリテーション」のことについて書かれています。
「心臓リハビリテーション」とはどんなものなのでしょう。

心臓外科の世界的権威である榊原什先生が発案された、患者さんに対して急性期医療後から社会復帰までを長い目でバックアップする方法であり、榊原記念病院では25年以上の歴史を誇ります。
具体的には医師の監視のもと運動療法をしたり、心臓病の講義を受けて自分の病気についての知識を身に付けたり、カウンセリングで生活習慣を見直したり、不安を吐きだして抑うつから解放されたり、患者さんが社会生活に戻られるまでのケア、そして再発のリスクを減らすケアとなります。

実はこの心臓病、予後の不安が大変大きいことが特徴であり、またいつあの発作に襲われるかと思うと体を動かすことはもとより、日常生活すらままならなくなるのが一般的なのです。
患者さんの不安を取り除き、これくらいなら動いても平気だという経験を積み重ね自信に変えていくには、救急設備が整った場所で医師の監視のもと、少しづつ身体を慣らしていける環境があるということは、心臓病患者さんにとってどれだけ心強いかわかりません。

実はこの「心臓リハビリテーション」(以下、心リハ)、アメリカやスウェーデンでは運動療法にヨガも取り入れられています。心リハではその患者さんの運動最大能力の40%~60%の強度で行うことが適切だと定められています。ちなみにヨガでは心地よいと感じる程度というのが目安になります。そしてヨガでは深い呼吸が自律神経に働きかけ、心拍数や血圧の安定を促し、さらには自己洞察力やセルフコントロール能力も養われ、自分で自分の体を守れるという自信につながっていきます。心臓病の講座を受け自分の体に何が起こっていたのかを学んだ方であれば尚更、ヨガの学びを合わせることでさらに再発のリスクを減らすことができるでしょう。実は心リハを継続されている心臓病患者さんは、健康で運動をしない人よりも、かなり長生きできるという報告もあります。
現代医療とリハビリを合わせることで、こんなに素晴らしい結果が得られるのです。

しかし日本の現状では、医学の発展に伴い、重症例は減り入院期間も短くなった今、「救命」=「治療の終了」という図式が「心臓リハビリテーションの普及」を妨げているという現実があるというのです。
長山先生はこう嘆いてらっしゃいます。
「今の医学があまりにも専門化してしまい、患者さんの気持ちや本当に必要としていることに気付きにくくなっている。」

日本での更なる心臓リハビリテーションの普及と、そこにヨガプログラムも仲間入りしている未来を願って止みません。