HOME > メディカルヨガ普及への期待

(寄稿順)

新見 正則

帝京大学医学部外科准教授
日本ヨガメディカル協会 理事

西洋医学の進歩を受けて平均寿命はこの100年間で約2倍に延長しました。そしてエビデンスがある医療が行われ、そしてガイドラインが作成され、医療の均霑化(きんてんか、どこでも同じ水準の医療が受けられること)が計られています。それは実に素晴らしいことです。
しかし、エビデンスとしてはなかなか捉えられない努力も実は必要だと医療者は感じているはずです。均霑化されたがんの治療を受けていても、予後に、そして残された人生に相当な差があることを実臨床医は肌で感じています。そんな体や心に良いことのひとつがヨガであろうと思っています。

岡部朋子さんが僕の外来に最初に来たときに、僕は医療現場におけるヨガの魅力をひと言でいうと何ですと尋ねました。すると彼女は、「呼吸をしていれば、誰でもできます」と答えました。「すると寝たきりの人でもできるのですね」と重ねて尋ねました。そして「もちろんです」と即答されました。これが、僕がヨガをやってみようと決心した端緒です。そして自分でやってみて、そして患者さんに勧めてみて、ヨガの良さを体感しました。

次にやるべきことは、この医療にとって間違いなく有効な手段のひとつであるヨガをどうやって広めるかです。そこで直感的に感じたことは、ヨガの言葉を使わないヨガです。
もちろん教える側がヨガの本質を理解していることは必須です。しかし、教わる側にその必要はありません。まずやってみる。素晴らしさを体感する。そして人生がより豊かになる。そんな役割をヨガで果たせればいいですね。

そんな思いで、そんな思いを共有した有志が集まって、立ち上げたグループです。
是非、多くの方々に興味を持って頂き、そして患者さんにその歴史的叡智が還元され、そして病気にならない体や心が育まれることを祈っています。

橋村 伸也

雑誌 Yogini 編集長
日本ヨガメディカル協会 理事

ヨガとは、心と身体を整え、そして自分らしさを取り戻すためのエクササイズです。
そこには、呼吸法、座法(ポーズ)、そして瞑想法(メディテーション)があります。
これらを上手く用いる事で、心もすっきりと、身体も楽な状態を作り、考え方や、思考のクセ、自分のあり方や考え方などを客観視することができるようになります。

ただ、これまでは、ヨガの良さを伝える時に、「なんかいいよ!」という曖昧な表現でしか相手に伝える事ができなかったのです。
私は、このヨガの“漠然とした良さ”を理解した上で、そこにとどまらず、なぜいいのか? どういいのか? どうなるのか? ということを、より明確化してこの素晴らしいヨガというものを、多くの人に安心して受けてもらいたいし、さまざまな問題に対してヨガができる解決法を見い出してもらいたいと思っています。

ただ、ヨガで大切にしているのは、最終的には、心や身体を状態を整えて、人が持つ“気”や“エネルギー”を整える、高めるということです。
残念ながら、人間が、人間の持つ能力の深さや種類、効果について、また現在の科学や技術がすべてを解き明かすことはできないでしょうが、少しでも、多くのデータから傾向を知られたらと思っております。

ヨガメディカル協会に関しては、ヨガを用いて、さまざまな病や症状に対して予防すること、また病や症状に対して困っている人に対して、ヨガを効果的に用いてもらいたいという想いや医療現場の側にヨガがある環境や状況を作っていきたいという想いがあります。
必要な人に、必要な技術や、助け、そしてエネルギーが届くことを期待して、この協会発足のお手伝いをしたいと思っております。

石井 正則
JCHO東京新宿メディカルセンター
耳鼻咽喉科診療部長

日本ヨガメディカル協会 理事

わたくしがヨガを始めたきっかけは、自分の意志ではありませんでした。どちらかというとヨガには心理的に抵抗があった人間でした。しかし、いまから10年以上も前に大病を患い、その治療に対して諦めかけていたときです。回復のきっかけをつけてくれたのがヨガだったのです。ヨガをするたびに体も心も少しずつですが明かに回復する自分がいたのです。まさにわたくしのヨガのスタートとなる原点がメディカルヨガそのものだったのです。

その実体験があったため、ヨガの医学的な良さを拡げていこうと決心し、スタジオヨギーで公認インストラクターとなったのです。実は、本格的にヨガを始めた始めの頃の話ですが、前屈しても膝下までしか曲がらないわたくしでしたが、丁寧に辛抱強くヨガを教えてくれたスタジオヨギーの先生たちのおかげで、いまでは大半のアーサナ(ポーズ)が出来るようになり、皆様には心から感謝しています。

現在、わたくし自身は医者をしながら自分の病院の院内ヨガとうつ病の病院でヨガを教えておりますが、そこでもヨガを終わった後の皆さんの元気な笑顔を見るとやはりヨガの心身に与える影響力は素晴らしいと感じています。
最近、米国では、急速な勢いで200以上の病院が本格的に医療の中にメディカルヨガを取り込み始めました。これは今後さらに拡大していきます。病気そのものの治療というより、その治療を妨げず、支えとしての補完的な力を与えることが出来るからです。


うつ病患者さんに対するメディカルヨガ
(心療内科病院:楽山において)

さらに米国を中心にヨガに関する多くの医学的な研究報告が出て来ています。例えば、不安障害、睡眠障害、ストレス対策、うつ病、緩和ケアー、更年期障害、出産前の運動療法(マタニティヨガ)、さらには、動脈硬化、高血圧症、糖尿病など、いわゆる成人病の予防、認知症の予防など、将来への予防的介入の研究も始まっています。がん患者さんの精神的なサポートにも有効性が報告されています。
日本は世界の中でも急速な勢いで超高齢化社会に突入しています。元気で健康な老後を暮らせる方法を学べることはとても大切です。日本ヨガメディカル協会が考案しているメディカルヨガは、このような元気を優しいシステムで提供します。

地域住民の健康向上だけでなく、大学病院、総合病院、緩和ケアー施設、クリニック、リハビリテーション施設、精神科病院、介護施設など、多くの医療施設で、この安全なメディカルヨガが展開されると考えています。

大野 真司
がん研有明病院 乳腺センター長

日本ヨガメディカル協会
メディカルサポーター

乳がん患者さんは体だけでなく心も傷ついていて、術後1年間に治療が必要な適応障害やうつ状態の方は20-25%と報告されています。米国の乳がん治療専門施設では、患者さんのケアのために積極的にヨガが導入され、ヨガが患者さんの生活の質(Quality of life)向上に役立つことがたくさんの論文で発表されています。

しかし、日本ではこのようながん患者におけるヨガの効果についてはほとんど知られていません。
そこで、患者さんの会だけでなく、医療者にも知ってもらうために私が関わる医師や看護師の会で、日本ヨガメディカル協会の岡部先生にヨガの講義と実演をしていただきました。

具体的に行っていただいた講義、実演は以下のとおりです。

  • 2012年11月17日(福岡):
    再発乳がん患者さんのための市民公開講座
  • 2015年8月8日(東京):
    医師を対象としたAdvanced Care Planning勉強会
  • 2015年9月6日(神戸):
    看護師を対象としたブレストケアナースセミナー
  • 2016年1月31日(福岡):
    乳がん体験者と医療者を対象としたWith You Kyushu ~あなたとブレストケアを考える会~、講演タイトル「呼吸の波に揺れながら〜ヨガで急がず休まず」
  • 2016年6月17日(東京):
    第24回日本乳癌学会総会での患者セッション

「串刺しの心と書いて患者です」という川柳があるように、がんと診断された患者さんの心痛ははかりしれません。そして病気を治すためとはいえ、がん治療によって身体的にも後遺症で苦しむことは少なくありません。
日本人の20人にひとりががんサバイバーで、多くの人が心身のケアを必要としています。

現在の医療はEvidence Based Medicineが重要とされています。すでにたくさんのEvidenceが存在し、世界の一流がん専門施設が取り入れているヨガを日本でも医療に導入することが望まれます。

ヨガに関する多くの医学研究における科学的データが明らかにしてきたように、ヨガによって患者さんの心身の苦痛が軽減されます。これから日本でもメディカルヨガが広く社会に浸透していくことで一人でも多くの患者さんの状態がより良くなることを期待しています。